2024年共通テスト速報<分析>

数学II・数学B

総評
  • 問題構成は,昨年と同じく,大問5問(第1問,第2問は必答,第3問~第5問から2問選択)であった。
  • 第1問は,昨年と同じく2つの中問形式で出題された。しかし,第2問は,昨年までと異なり中問形式ではなかった。
  • 配点は,昨年と同じく,第1問,第2問が各30点,第3問~第5問が各20点であった。また,第1問の中問の配点は,〔1〕,〔2〕ともに15点であった。
  • 問題文の分量は,昨年の共通テストより微減(28頁→26頁)であった。
  • グラフを選ぶ設問や,文章で書かれた選択肢から選ぶ設問の数が昨年よりも増えた。
  • 教科書で扱われている基本的な事項を中心に出題されているが,内容の本質的な理解が問われており,さらに論理的思考力が身についているかどうかで,得点に差が出る問題が多かった。
  • 一方で,問題文の誘導が丁寧である点は昨年と同様であり,全体の難易度は昨年と同程度であったと思われる。
  • 日常生活での活用場面を想定した問題が昨年は数多く出題されたが,今年は第3問のみで出題された。
  • 選択問題の難易度については,第5問が比較的解きやすい出題内容であったが,第3問,第4問も難しくなく,大きな差はなかったと思われる。
第1問(必答問題)
配点30点
〔1〕 指数関数と対数関数(対数関数の性質,不等式の表す領域)
教科書章末問題を超えるレベル。
(1)は対数の底および真数の変化によるグラフの概形を考察する問題。対数の計算はほとんどなく,対数関数の性質を十分に理解しているかが問われた。
(2)は対数方程式が表す図形や,対数不等式が表す領域を選択する問題。領域では連立型の不等式で出題されたが,xを底とする対数を考えて,xが1より大きいかどうかで場合分けを行えばよい。
〔2〕 複素数と方程式(多項式の割り算,剰余の定理)
教科書章末問題を超えるレベル。
多項式の割り算の等式を利用する問題。
(1)は教科書例題レベルで平易。
(2)は余りが定数となるときの必要十分条件について考察する問題。「チ」は目新しい設問であり,論理の流れを正確に読み取れているかが問われた。誘導は丁寧であり,計算や難しい発想は要求されなかった。
(3)は具体的な式から定数と余りを求める問題。(2)で求めた必要十分条件を用いることで容易に計算できる。
全体として計算量が少なく,設問の意図が汲み取りやすい問題であった。
第2問(必答問題)
配点30点
微分法と積分法(定積分で表された関数,関数の値の変化,面積)
教科書章末問題を超えるレベル。
定積分と微分法,定積分と面積,3次関数のグラフの特徴に関する問題。
(1)は,定積分で表された関数の極値を求める問題。関数y=S(x)の導関数がy=f(x)であることの理解が問われた。(iii)のf(3)と一致するものを選ぶ設問は,共通テストの特徴的な出題といえる。
(2)は,定積分と面積に関する問題。面積が等しい条件を,定積分に関する等式で表す解法は標準的で平易。「チ」「ツ」のy=S(x)のグラフの概形を選ぶ設問は,「タ」がS(m)の値と等しいことに気づけたかどうかがポイント。
(3)は,3次関数のグラフの対称性に関する問題。定積分で表された関数を利用して示す出題は目新しいが,2次試験でもよく出題されている題材である。グラフをかいて位置関係を確認しながら,誘導にしたがって当てはまる選択肢を素早く選びたい。
計算量は多くないため,微分法と積分法の本質的な内容の理解度により,得点に差が出た問題だったと思われる。
第3問(選択問題)
配点20点
確率分布と統計的な推測(母平均の推定,期待値)
教科書章末問題レベル。
日曜日の天気が晴れになる確率について考える問題。
(1)標本平均の期待値と標準偏差,母平均に対する信頼度95%の信頼区間など,確率変数の基本的な内容を問う問題。式変形ならびに計算がスムーズに行えれば問題なく解答できる。
(2)k週間天気を調べたとき,「ちょうど3週連続で日曜日が晴れになること」について考える問題。(1)と同様に晴れを1,それ以外を0という確率変数で表していることから,1がちょうど3つ連続して並ぶような場合を考えることになるが,問題設定を正確に読み解くのに時間を要した受験生もいたと思われる。設定さえ把握すれば,確率と1次関数の知識で解答可能である。
第4問(選択問題)
配点20点
数列(漸化式)
教科書章末問題を超えるレベル。
(1),(2)は教科書例題レベルで平易。
(3)は与えられた漸化式について考察する問題。(i),(ii)は具体的な数値計算で平易。(iii)の(テ)は数学的帰納法を用いた証明で示すべき内容の確認。(ト)は太郎さんの実験をもとに正誤判定を行う。(I)は命題Aから直ちに判定可能。(II),(III)は実験結果を利用する必要がある。
全体として,利用する数列の知識・技能は平易ではあるが,最後の正誤判定は論理的思考力が問われるため,その部分で差がついた可能性がある。
第5問(選択問題)
配点20点
空間のベクトル(空間ベクトルの内積)
教科書章末問題を超えるレベル。
2直線上をそれぞれ動く点P,Qに対し,PQの長さの最小値を求める問題。
(1)空間ベクトルの内積に関する基本的な問題。
(2)OPの長さの2乗を2次関数で表すか,またはOPとℓが垂直であることを利用するかの2通りの考え方を提示される。いずれの考え方を用いても計算量はあまり変わらない。
(3)2点が動くとき,(2)の考え方のいずれかを応用して考えることになるが,PQが2つの直線と垂直であることを用いた方が計算量が少なくて済む。

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