2023年共通テスト速報<分析>

数学II・数学B

総評
  • 問題構成は,昨年と同じく,大問5問(第1問,第2問は必答,第3問~第5問から2問選択)であった。
  • 第1問,第2問は2つの中問形式で出題された。
  • 配点は,昨年と同じく,第1問,第2問が各30点,第3問~第5問が各20点であった。また,第1問の中問の配点は,〔1〕が18点,〔2〕が12点,第2問の中問の配点は,〔1〕,〔2〕ともに15点,であった。
  • 問題文の分量は,昨年の共通テストより微増(25頁→28頁)であった。
  • 与えられた条件や,求めた式などを次の問題に活用できる場面が多かった。この点に気が付き,いかに計算を省略できるかがポイントであった。うまく計算を省略できれば,昨年に比べて計算量は減ったといえる。
  • 昨年と同様に問題文の分量は多かったが,誘導が丁寧であり,全体としての難易度は易しくなったと思われる。
  • 第2問〔2〕,第3問,第4問など,日常生活での活用場面を想定した問題が数多く出題された。
  • 選択問題の難易度については,第3問,第4問が比較的易しく,第5問が難しかったと思われる。
第1問(必答問題)
配点30点
〔1〕 三角関数(加法定理,三角関数を含む不等式)
教科書章末問題レベル。
昨年と異なり,図形と方程式との融合問題ではなかった。
加法定理,倍角の公式を使用して三角関数を含む不等式を解く。誘導も丁寧であった。ただし,考えるxの値の範囲が小問ごとに異なったり,考える単位円の動径が2πを超える場合を扱ったりするなど,注意すべき点がいくつかある。
(4)は(2)の結果をどのように利用するかに気付けるがポイント。
〔2〕 指数関数と対数関数(対数の定義,性質)
教科書章末問題レベル。
[ツ]では対数の定義を問われており,以降の設問で利用する。
(2)では背理法を用いて対数が無理数であることを示す方法を考察する。(ⅲ)では文字を用いた一般的な対数を考えるが,選択肢では対数の底と真数の偶奇にまでしか踏み込んでおらず,(ⅱ)の内容をたどれば正解を導ける。
第2問(必答問題)
配点30点
〔1〕 微分法(関数の値の変化,最大値・最小値)
教科書章末問題レベル。
文字係数の3次関数の極値や最大を調べ,その結果を利用して円錐に内接する円柱の体積の最大値を求める問題。
(1)は基本的な3次関数の極値と,最大となる x の値を求める問題。係数に文字を含んでいるものの基本的な3次関数であるため,容易に解答できる。
(2)は(1)の結果から,円錐に内接する円柱の体積の最大値を求める問題。立式の際に円柱の高さを x で表せるかがポイントであった。(1)で計算はほとんど終わらせているので,立式後はVとf(x)の関係さえ理解できていれば簡単に解ける問題であった。
〔2〕 積分法(不定積分,定積分,面積)
教科書章末問題を超えるレベル。
定積分からソメイヨシノの開花日時を求める問題。
(1)は基本的な積分の計算問題。定積分と不定積分が1問ずつあるが,どちらも確実に正解したい。
(2)はソメイヨシノの開花日を定積分から推測するという目新しい題材。問題文が長いものの,設定を理解できれば難しくはない。(i)は(1)と同じ計算であり,(ii)の2次関数は問題文中に計算結果が記されているため,ほぼ計算せずに解くことができる。最後の[ヒ]でつまづく生徒が多かったかもしれないが,[ハ]を求めた理由を考えれば,誘導の方針が理解できる。
第3問(選択問題)
配点20点
確率分布と統計的な推測(二項分布,正規分布,推定)
教科書章末問題レベル。
ピーマンの重さについて分析する問題。
(1)正規分布,標本平均の期待値と標準偏差,信頼度90%での推定に関する問題。どれも基本的な内容が問われている。推定の問題について,一般的に問われる信頼区間の信頼度が95%であるため,信頼度90%の信頼区間を求めることに関して戸惑う生徒もいたかもしれないが,教科書をきちんと理解できていれば問題なく解答できる。
(2)二項分布の正規分布による近似を利用し,確率を考察する問題。こちらも基本的な内容であり,誘導に沿って解いていけば解答は難しくないといえる。
第4問(選択問題)
配点20点
数列(等比数列の和,漸化式の立式)
教科書章末問題レベル。
複利計算による預金の変化を2つの方針で考察していく問題。
(1)漸化式の利用(方針1),等比数列の和の利用(方針2)によって,n年目の初めの預金額を2通りの方法で求める問題。複利計算の問題は典型的な内容であり,問われていることも,誘導に沿っていけば難しくはない。
(2) (1)で求めた式を利用して,10年目の終わりの預金が30万円以上になるための,毎年の入金額を考察する問題。不等式の計算が少々煩雑なので注意が必要だが,問われている内容は易しい。
(3)入金前の預金が10万円でなく13万円だった場合における,n年目のはじめの預金額の差を考察する問題。もともと預金口座にあったお金がn年目の初めにいくらになっているかに着目すればよいことに気が付けるかがポイントである。
第5問(選択問題)
配点20点
空間のベクトル(内積)
教科書章末問題を超えるレベル。
三角錐について考察する問題である。
(1)は中点の位置ベクトルと内積の知識を問う基礎的な問題。
(2)はなす角が90°という条件からベクトルを求める典型的な問題。
(3)の(i)は,2つのベクトルが垂直であるという条件から,ベクトル間の関係式を求める典型的な問題。ここまでは基礎的・典型的な問題なので,しっかりと解答したい。
(3)の(ii)以降は,(3)の(i)で得られた関係式を考察する問題である。得られた式の図形的な意味を考察すればよい問題であるが,どの式を考察すればよいかなど状況を把握する必要があるだけでなく,必要十分条件や図形の性質に関する理解も求められるため,多くの生徒が難しく感じたかもしれない。

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