2023年共通テスト速報<分析>

数学I・数学A

総評
  • 問題構成は,昨年と同じく,大問5問(第1問,第2問は必答,第3問~第5問から2問選択)であった。
  • 第1問,第2問ともに2つの中問形式で出題された。(昨年の第1問は3つの中問形式であった。)
  • 配点は,昨年と同じく,第1問,第2問が各30点,第3問~第5問が各20点であった。また,第1問の中問の配点は,〔1〕が10点,〔2〕が20点,第2問の中問の配点は,〔1〕,〔2〕ともに15点であった。
  • 問題文の分量は,昨年の共通テストより増加(23頁→30頁)であった。第2問〔2〕,第3問,第4問,第5問のいずれも頁数が増加したことによる。
  • 全体的に昨年より誘導が丁寧で解きやすかったと思われる。
  • 計算量が減り,思考力を要する問題も多く出題されなかったが,設定が煩雑であったり,文章量が増加したりしたことで時間的な制約が厳しかったと思われる。
  • 第4問では対話形式の問題,第2問〔1〕,第2問〔2〕では日常生活での活用場面を想定した問題が出題された。
  • 第3問では,確率についての問題が出題されず,場合の数の問題のみが出題されたことが特徴的であった。
  • 選択問題については,第3問が第4問,第5問に比べると解きやすかったと思われる。
第1問(必答問題)
配点30点
〔1〕 数と式(1次不等式,式の値)
教科書章末問題レベル。
前半は絶対値を含む不等式についての問題で,後半は2つの条件を用いて式の値を求める問題であった。どちらも誘導が丁寧で,計算も平易であるため容易に解ける問題であった。
〔2〕 図形と計量(三角形への応用,空間図形への応用)
教科書章末問題レベル。
(1)円に内接する三角形の面積の最大値に関する問題。三角形の面積が最大になるとき,直線CDが円の中心を通ることに気が付けば容易に解ける問題であった。
(2)球に内接する三角錐の体積の最大値に関する問題。三角錐の体積が最大になるとき,直線THが球の中心を通ることに気が付けば,点Hが三角形PQRの外心と一致することがわかる。このことに気が付くことができるかが,問題を解くうえでのポイントであった。
第2問(必答問題)
配点30点
〔1〕 データの分析(ヒストグラム,箱ひげ図,代表値,相関)
教科書章末問題レベル。
実社会のデータを基に作成した図から情報を読み取る形式は,昨年までの共通テストやセンター試験と同じである。教科書にある分散の定義やグラフの読み取りなど,基本的な内容が問われている。全体的な難易度は昨年より易化しており,完答したい問題である。
(2)(i)は,データ数が異なる2つの箱ひげ図から読み取れることとして正しい選択肢を選ぶ,目新しい問題であった。
昨年同様,分散や標準偏差を計算する問題は出題されなかったが,今年は分散の定義に関する問題が(2)(ii)で出題された。正しい選択肢を選ぶためには,分散だけでなく偏差についても理解している必要がある。
昨年出題があったような,散布図を選ぶ問題は出題されなかった。
(3)について,平均・分散・標準偏差・共分散が与えられており,そのなかから正しい数値を使って相関係数を計算する問題は昨年と同様の問われ方であった。昨年は数値を解答する出題形式であったが,今年は正しい選択肢を選ぶ形式での出題だった。
〔2〕 2次関数(2次関数の決定)
教科書章末問題を超えるレベル。
バスケットボールでシュートを打つときの軌道(放物線)について,プロ選手と花子さんそれぞれの場合を比較する問題。
文章量が多く設定を読み取るのに時間がかかる一方,計算自体は,通る点の座標から係数を決定するものや平方完成がメインで,見た目ほど難しくなかっただろう。設定をすんなりと読み取れたかどうかで差がつく問題だと考えられる。
(1)与えられた「仮定」から,放物線C1の方程式を求め,「ボールが最も高くなるときの地上の位置」を比較する。C1とC2の頂点のx座標を比較する際,pが負であることに注意する必要がある。また,グラフの対称性を考えて,頂点のx座標の位置関係を判断することもできる。
(2)ボールがリングのすれすれを通る場合について,「シュートの高さ」を比較する。太郎さんと花子さんの会話をもとに設定を読み取る形式で,(1)同様に設定を読み取るのに時間がかかる。
第3問(選択問題)
配点20点
場合の数と確率(場合の数,同じものを含む順列)
教科書章末問題レベル。
ひもでつながれているいくつかの球の色の塗り分け方を題材とした問題。今年は確率の出題がなかった。
(1)~(3)は,図Aを用いた例のように,積の法則を利用して解くことができる。順列や円順列といった公式にあてはめようとせず,素朴に積の法則を用いて求めるところがポイント。
(4)は組合せや同じものを含む順列といった基本的な内容が問われた。
(5)は問題で与えられた構想を参考にして,「全体から引く」方針で場合の数を求める問題。うまく誘導に乗れれば,問題なく解けただろう。
(6)は(5)の構想をうまく利用できる。全体的に計算量は少なめで,解法に気が付けば難しくない。短時間で解き切りたい問題であった。
第4問(選択問題)
配点20点
整数の性質(約数と倍数,1次不定方程式)
教科書章末問題を超えるレベル。
長方形をすき間なく並べて,大きな長方形や正方形を作ることを題材とした問題。
(1)は素因数分解を利用して,最大公約数・最小公倍数,1次不定方程式の自然数解などを求める問題。オーソドックスな出題内容であるが,何を求めればよいのか問題文から読み取る必要があり,難しく感じた生徒も少なくなかったと思われる。
(2)の最後の設問は,花子さんと太郎さんの会話をヒントに解き進める出題形式だが,誘導がわかりにくく,解答の方針に迷った生徒も多かったと思われる。問われている内容を整理しながら解き進められたかどうかがポイント。
第5問(選択問題)
配点20点
図形の性質(円に内接する四角形,作図)
教科書章末問題を超えるレベル。
円に内接する四角形に関する問題。与えられた作図の手順にしたがって図を描き,同一円周上にある点や等しい角を選択肢から選ぶ出題形式。令和3年度共通テスト第2日程でも似た出題形式があった。
(1)は誘導が丁寧であり,円周角の定理,円に内接する四角形,円の接線などに関する基本的な内容を理解できていれば,問題なく解答できたと思われる。
(2)では,(1)とは直線lの引き方を変更した場合について考察する。(1)で考察した内容を振り返って,別の場合に応用できるかどうかが問われている。5点O,P,R,T,Sが同一円周上にあることに気が付けたかどうかがポイント。

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