2021年共通テスト速報<分析>

数学II・数学B

総評
  • 問題構成は,昨年のセンター試験と同じく,大問5問(第1問,第2問は必答,第3問~第5問から2問選択)であった。
  • 第1問は2つの中問形式で出題された。
  • 配点は,昨年のセンター試験や第2回共通テスト試行調査(以下,試行調査とする)と同じく,第1問,第2問が各30点,第3問~第5問が各20点であった。また,第1問の中問の配点は,〔1〕,〔2〕ともに15点であった。
  • 問題文の分量は,昨年のセンター試験より増(15頁→19頁)であった。ただし,試行調査(25頁)よりは少なかった。
  • 計算量は昨年のセンター試験よりやや少なく,選択肢から答えを選ぶ問題が増加した。
  • 文章量はセンター試験より多少増えたが,計算量が少なくなったので,考える時間を確保できたと思われる。
  • 対話形式で出題された問題として,第1問〔2〕が挙げられる。試行調査で多く見られた出題形式であったが,対話の数,分量ともに減少した。また,問題の流れが対話中心で進められるのではなく,一部の設問のヒントになるものに限定されていた。
  • 日常生活での活用場面を想定した問題や,コンピュータの活用場面を想定した出題は見られなかった。
  • 選択問題の難易度については,第3問~第5問で大きな差はなかったが,第4問の「数列」が最もやさしかった。第5問の「ベクトル」は最終問題のポイントに気づけるかという点で,第3問,第4問に比べ完答するのは難しかったかもしれない。
第1問(必答問題)
配点30点
〔1〕 三角関数(三角関数の最大値,三角関数の合成)
教科書章末問題を超えるレベル。
三角関数の合成を利用して,三角関数の最大値を求める問題。
(1)は教科書本文レベルの内容で,(2)の肩慣らしとなっている。ここは素早く解答したい。
(2)は(1)の関数を文字係数pに変更している。
さらに小問に分かれており,(i)p=0,(ii)p>0,(iii)p<0で場合分けを考える。
(i)は易しく,(ii)がこの問題の山場となる。加法定理を用いて,cosで合成する必要があり,戸惑った受験生も多かったと思われる。三角関数の合成を公式として覚えるのではなく,教科書でその導出方法をきちんと押さえておく必要がある。(iii)は(ii)と同様にcosで合成してもよいが,誘導を無視してsinで合成する方法もある。
〔2〕 指数関数・対数関数(指数関数の値,最小値,恒等式)
教科書章末問題を超えるレベル。
2つの指数関数について,関数の値や恒等式を考える問題。
(1)は関数の値と最小値を求める。相加平均と相乗平均の関係を用いることは問題文で示されており,非常に丁寧な誘導が与えられている。対数については,定義をワンポイントで使用するのみに留まった。
(2)は2つの関数について4つの恒等式を求める問題。指数関数の定義に従って計算するだけで,難しくない。解答群から答えを選ぶ設問も含まれている。
(3)は三角関数と指数関数の類似性について対話形式で考察する問題。会話文の分量は少なく,設問のヒントになっている。花子さんの会話文からβ=0を代入することに気づけば答えは1つに絞られるので,試験では細かい考察は省略してもよい。
第2問(必答問題)
配点30点
微分法と積分法(接線の方程式,面積,最大値)
教科書章末問題レベル。
2次関数や3次関数のグラフとy軸との交点における接線の方程式を求める問題。
(1)の前半で具体例について求め,後半で文字を用いて一般化する流れになっている。曲線と接線および直線で囲まれた図形の面積を求め,最後に面積が一定のときの文字係数の関係を表すグラフの概形を選ぶ。文字を用いて考察する部分以外は特に難しいところはない。
(2)は題材が3次関数に変わっただけで,前半は(1)とほぼ同じ流れである。後半は2つの関数の差で表された関数について考えている。グラフの概形や共有点のx座標,絶対値のついた3次関数が最大となるxの値を求める設問であるが,どれも基本的な内容で教科書でしっかりと学習していれば十分解くことができる。文字を使って計算するというのが特徴的である。
第3問(選択問題)
配点20点
確率分布と統計的な推測(標本平均の分布と正規分布,母平均の推定)
教科書章末問題レベル。
高校の生徒100人を抽出し,1週間の読書時間について考察する問題。昨年のセンター試験や試行調査と似たような題材ではあるが,昨年のセンター試験からは明らかに難化した。
(1)は無作為標本うちで全く読書をしなかった生徒の数を表す確率変数が従う分布と,平均,標準偏差を求める問題。基本的で易しい。
(2)は(1)の分布の正規分布による近似の問題。典型的かつ標準的な計算問題。昨年のセンター試験でも同じような問題が出題されたが,誘導がない分,難易度は上がった。
(3)は母平均の推定に関する問題。信頼度95%の信頼区間について,区間や幅がどのような条件を満たすかを調べる。教科書で信頼区間の意味をきちんと理解しておく必要がある。
(4),(5)は異なる標本を抽出したとき,もとの標本との結びつきを考察する問題。
(3)の後半,(4),(5)は一般的な求値問題ではなく,結果からどのようなことがいえるかを問う問題のため,公式を暗記しても解くのは難しい。教科書の本文で学んだことを本質的に理解できているかどうかが問われる問題であった。
第4問(選択問題)
配点20点
数列(等差数列,等比数列,和の記号Σ,漸化式)
教科書章末問題レベル。
(1)は等差数列,等比数列からなる等式にそれぞれの一般項の式を代入して定数を求める問題。与えられた等式は一見複雑に見えるが,誘導通りに進められれば難しくない。
(2)は数列の和の計算問題。とても易しく,計算も単純なので,確実に得点しておくべき。
(3),(4)は(1)とは異なる数列,異なる等式において,漸化式を導き出してその数列の性質を求める問題。計算は少しあるが,丁寧な誘導があるので,誘導に沿って式変形を行えばよい。メインは導出した漸化式が満たす性質を考察することで,昨年までのセンター試験では問われなかった形式の問題である。漸化式の形からどのような数列であるのか理解できている必要がある。
第5問(選択問題)
配点20点
空間ベクトル(内積,空間ベクトルと図形)
教科書章末問題レベル。
1辺の長さが1である正五角形や正十二面体について考察する問題である。図が与えられており,誘導も丁寧であるから,誘導に沿って解いていけばよい。計算量は例年に比べて少なく,難易度もそこまで高くない。しかし,問題文が長く正十二面体の問題は珍しいので,解きづらく感じた生徒も多かったと思われる。(2)の内積の問題では,文字aを用いて計算し,最後に数値を代入すれば,計算ミスを防ぎやすい。日ごろから,計算の工夫を心がけたい。また,(2)の(セ)は,四角形の形を解答群から選ぶ問題であった。

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