2021年共通テスト速報<分析>

数学I・数学A

総評
  • 問題構成は,昨年のセンター試験と同じく,大問5問(第1問,第2問は必答,第3問~第5問から2問選択)であった。
  • 第1問,第2問は,センター試験では例年それぞれ3題,2題の独立した中問に分かれていたが,第1問,第2問ともに独立した2つの中問が出題された。
  • 数学Ⅰ・数学Aでは,「集合と命題」に関する出題がなかった。
  • 配点は,昨年のセンター試験や第2回共通テスト試行調査(以下,試行調査とする)と同じく,第1問,第2問が各30点,第3問~第5問が各20点であった。また,第1問,第2問の中問の配点は,第1問〔1〕が10点,〔2〕が20点,第2問〔1〕が15点,〔2〕が15点であった。
  • 問題文の分量は,試行調査と同程度で,昨年のセンター試験より大幅増(19頁→27頁)であった。
  • 問題数,計算量は,昨年のセンター試験と同程度であったが,思考力・判断力を問う設問が複数見られた。そのため,全体的な難易度は昨年のセンター試験よりもやや難化。
  • 試験時間が60分から70分に変更されたが,時間内にすべて解き切るのは大変だったと思われる。
  • 対話形式で出題された問題として,第1問〔1〕と第3問が挙げられる。試行調査で多く見られた出題形式であったが,対話の数,分量ともに減少した。また,問題の流れが対話中心で進められるのではなく,一部の設問のヒントになるものに限定されていた。
  • 日常生活での活用場面を想定した問題として,第2問〔1〕,〔2〕が挙げられる。第2問〔1〕は,「数学的な問題の発見・解決の全過程を問う問題」にも該当するものと思われる。第2問〔2〕の「データの分析」の問題は,センター試験同様,実社会のデータを基にしたものであった。
  • グラフ表示ソフトなど,コンピュータの活用場面を想定した出題は見られなかった。
  • 選択問題の難易度については,第3問~第5問で大きな差はなかったものの,第5問は正確な図をかいて解き進める必要があったため,第3問,第4問の方が解きやすかったかもしれない。
第1問(必答問題)
配点30点
〔1〕 数と式(2次方程式,式の値,有理数・無理数)
教科書章末問題レベル。
(1),(2)は従来からの出題形式から変わらず,内容も基本的であった。(3)は会話文をヒントにする問題が出題された。やや発展的な内容ではあったものの,会話文のヒントで解くことができる,共通テストならではの出題であった。
〔2〕 図形と計量(三角形の面積,外接円の半径の大小関係)
教科書章末問題を超えるレベル。
全体として,既知の公式や性質をうまく利用しながら解く必要がある。公式を単に暗記しているだけでは解けなかっただろう。教科書に書かれている公式の成り立ちや定理の証明をおさえるなど,日常学習において「深い学び」をしていたかどうかで差がついた問題と思われる。
(1)は単純な面積求値問題。
(2)は余弦定理を利用して式の値の符号を答える問題。教科書で鋭角,鈍角,直角となる辺の条件をおさえていれば解けただろう。
(3)は(2)ではなく(1)の結果がヒントになっており,混乱した生徒もいたと思われる。なお,試行調査第2問〔1〕で似た設問があった。
(4)は正弦定理とそれまでの結果をもとに考えられるかが問われており,共通テストらしい出題であったといえる。
第2問(必答問題)
配点30点
〔1〕 2次関数(2次関数の最大と最小)
教科書章末問題レベル。
陸上競技におけるピッチとストライドの関係を分析し,タイムが最速になるときについて調べる問題。用語に馴染みのある生徒には有利だったかもしれない。問題設定の説明が多く問題文が長めであったので,普段から長文中のエッセンスを素早く抜き出す訓練をしていたかどうかで差がついただろう。日常の事象から問題提起をし,自分で仮定して考える,共通テストらしい出題であった。数学の内容としては,2次関数の最小値を求める問題で,扱われている関数も簡単なものであった。小数の計算がやや大変なので,計算力も求められる。
〔2〕 データの分析(箱ひげ図,ヒストグラム,散布図)
教科書章末問題レベル。
実社会のデータを基に作成した図から情報を読み取る形式は,昨年までのセンター試験と同じである。教科書にある四分位数の定義や,箱ひげ図や散布図からの読み取りといった基本的な内容が問われている。全体的な難易度もセンター試験と同程度であり,完答したい問題である。
(2)の箱ひげ図は数が多くて見にくいので,必要な図や数値だけに注目できるように,適宜印や数字を書き込むなどの工夫をしたい。
第3問(選択問題)
配点20点
場合の数と確率(反復試行の確率,条件付き確率)
教科書章末問題レベル。
くじ引きの結果から,どの箱からくじを引いた可能性が高いかを,条件付き確率を用いて考察する問題。
(1)は,反復試行の確率,条件付き確率の基本的な内容が問われており,平易。
(2)の語句の穴埋めでは,やや戸惑った受験生がいたかもしれない。ただし,(3),(4)の対話内容から推測することも可能であったため,正解にたどりつきたい設問。
(3)は,(2)の事実(*)を用いて解き進めることで計算過程を一部省略できるが,分母・分子が3桁の整数になるため,計算ミスに注意したい。
(4)は,4つの箱を,くじを引いた可能性の高い順に並べる問題。(1)~(3)で得られた結果を整理・活用しながら考察するといった,共通テストらしい出題であった。確率の大小をすばやく判断できるかどうかもポイント。
第4問(選択問題)
配点20点
整数の性質(1次不定方程式)
教科書章末問題レベル。
円周上に並ぶ15個の点を移動する石に関する問題。題材としては,場合の数と確率の分野で扱うことも多いため,取り組みやすい内容だったと思われる。1次不定方程式の問題に帰着する部分には,丁寧な誘導が付けられている。
(1),(2)は1次不定方程式の基本的な内容で平易。
(3)は,さいころを投げる回数を(2)で求めた回数より少なくできないかを考察する問題。
(4)は(3)で調べた最小回数が最大となる点を考察する問題。選択肢の5つの点の最小回数を調べていては,かなりの時間を要する。(1)~(3)で得られた結果を整理し,予想を立てて考察する必要があるだろう。思考力が問われる共通テストらしい出題であった。
第5問(選択問題)
配点20点
図形の性質(外接円・内接円の性質,方べきの定理とその逆)
教科書章末問題レベル。
平面図形からの出題であったが,チェバ,メネラウスの定理は出題されなかった。標準的な内容が問われているため,比較的取り組みやすい問題であった。センター試験同様,点の位置関係などを正確な図で表せていれば,三角形の相似や方べきの定理の利用に気がつきやすくなり,見通しよく解くことができただろう。しかし,問題後半で円が複数現れるので,図をかくことが難しく感じた受験生も多かったと思われる。図形の性質に関する知識を用いて,できるだけ正確な図がかけるように練習しておくことが重要である。また,複雑な図に対しては,1つの図に情報をまとめて問題を解こうとするのではなく,求めるものに対して必要な情報を見抜き,適した図を新たにかくことがポイント。

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