自己点検・検証結果を受けた今後の改善方策について

平成28年4月26日
数研出版株式会社
代表取締役社長 星野 泰也

 弊社において,文部科学省が定める「教科用図書検定規則実施細則」や,一般社団法人教科書協会制定の「教科書宣伝行動基準」に抵触する不適切な行為がありましたことは,すでに新聞等に報じられた通りでございます。
 具体的には,教師用指導書・副教材・ソフト教材および教科書見本本の制作を進めていく中で,「中学校数学」の申請図書の全部もしくは一部を開示して意見を聴取,または聴取しようとした可能性のある事案が,平成22年度の検定期間中と平成26年度の検定期間中にございました。その中には,謝礼として意見料等の金品をお支払いした事案もございました。また,外形的に見ると,その趣旨に疑念をもたれるおそれのあるものとして,中元・歳暮に関わる事案がございました。
 これらの行為は,教科書採択の公正性・透明性に疑念を生じさせかねないものであり,弊社の教科書制作・発行に関わる姿勢・意識に問題がございましたことを深く反省しております。弊社の教科書をお使いの生徒,保護者の皆様,学校その他教育関係機関の皆様,および国民の皆様の教科書に対する信頼を損なう事態を引き起こしましたことを,改めまして深くお詫び申し上げます。
 今後は,文部科学省や教科書協会の定めるルールを遵守するよう社内に改めて徹底するとともに,適正な教科書制作・発行を実現するための業務システムを構築することで,問題の再発防止に真摯に取り組んでまいります。
 今回の事案を総括のうえ,具体的な改善方策を,以下の内容にて文部科学省に報告しましたので,ここにお知らせいたします。

1 コンプライアンスのための社内組織構築

A.教科書関連業務のコンプライアンスを確実に遂行するため,「コンプライアンス本部」「コンプライアンス本部推進室」(以下,推進室)「コンプライアンス相談窓口」(以下,相談窓口)を設置する。

1.コンプライアンス本部は,取締役会の下に置き,社内各部門から独立した機関として,業務審査(承認)・行動基準作成・従業員教育・監査等,コンプライアンス管理のための責任と権限を与えるものとする。会社のコンプライアンスに関する施策方針を立案し,会社全体のコンプライアンス活動を牽引する機関とする。

2.推進室は,コンプライアンス本部の内部[下部]組織として,コンプライアンス本部の施策方針に基づき,行動基準立案・従業員研修・内部監査等を実施し,コンプライアンス活動を推進する。また,コンプライアンス本部の方針・施策に関しても適宜提案を行い,それを具体的に遂行する実務部門として機能させる。

3.相談窓口は,コンプライアンスに関わる従業員からの相談を受け付ける。推進室と連携させることで,社内のコンプライアンス環境の整備に寄与するものとする。

◆コンプライアンス関連社内体制図: (平成28年4月1日より施行)

B.役員はコンプライアンスを率先して遂行し,他の役員(及びその関連業務)の監視をより一層徹底することで,万一不適切な行為が確認された場合はその是正に努めるよう,善管注意義務を果たすこととする。

2 コンプライアンス再教育のための研修制度

A.コンプライアンス再教育のための研修を,コンプライアンス本部(推進室)が中心となり,役員及び全従業員に対し実施する。

B.教育内容は,「教科用図書検定規則実施細則」,今後,教科書協会が定める「教科書発行者行動規範」のほか,教科書採択の公正性・透明性に関わる社内規程(→次項3),その他関連する法令・規則を用い,その遵守の重要性を徹底するものとする。

C.申請図書の提出前,教科書採択期間の開始前には,定期的に研修を実施し,法令や規則に対する遵守意識を標準化する。その他,各部門の実務経験に応じた研修においても,コンプライアンス教育をプログラムに組み入れ,組織内での役割に即した理解と実行を定着させる。

◆コンプライアンス研修工程表: 以下の計画を確実に履行し,その他随時指導を行う。

【注】上記Aのように,指導計画・方針についてはコンプライアンス本部(推進室)が主導するが,実際の指導(講義)に関しては,各部門・各研修において,責任のある適切な者を内部講師として起用することも可とする。

3 教科書採択の公正性・透明性の確保に向けた活動

A.上記2の研修を実行し,「教科用図書検定規則実施細則」や文部科学省の諸通知,教科書協会のルール等に抵触しないことを前提とした業務活動を行う。

B.上述の規則等に定めのない点について社内規程で定めることが教科書採択の公正性・透明性を確保する観点から有益と思われる場合には,顧問弁護士など社外の専門家の助力も得たうえで社内規程を整備する。申請図書の管理,執筆・検査・意見聴取方法やその謝礼支払方法など教育公務員・採択関係者との関わり方を明確に定め,適正な教科書制作・発行を実現するための業務システムを構築する。

C.上記Bの規程に関しては,教科書協会の制定する規則類等にも関連するので,その内容を十分理解したうえで,編集・営業等に関わる種々の具体的な活動の在り方を定めるものとする。

D.特に本年4月以降の教科書宣伝に関しては,従来行ってきた個々の営業活動の妥当性を再検証し,ルール違反や疑念を生じさせる行為がない点を確実にし,その遵守を周知徹底したうえで,宣伝活動を開始することとする。また宣伝期間中も,営業に従事する各社員において上記規則類や社内規程の遵守が確実に履行されていることを随時確認する。

4 社内処分

A.今回の事案に対する経営責任を明確にするため,関係取締役を譴責のうえ,役員報酬減額処分(平成28年3月より実施)とする。

以 上

※平成29年9月1日より
「コンプライアンス本部推進室」は、「コンプライアンス本部審査室」と名称変更しました。
また、コンプライアンス本部に「コンプライアンス推進部」を設置しました。
旧推進室が遂行してきた内容をコンプライアンス本部審査室とコンプライアンス推進部の両者で分担するとともに、本体制によりコンプライアンスの遵守を一層確実なものとします。