いま再び、右脳と左脳が結びつく時が来ました。
社会には、数学とは論理的で左脳が行う作業であり、デザインや美術作品制作とは直観的で右脳が働く作業であるという通念があります。しかし、数学のデザイン・美術への関わり方を探り、かつ数学を巧みに活用することで、デザイン・美術の作品に「数理的な裏づけ」という新たな信頼性を持たせることが可能となります。本書には、遠近法や黄金比はもとより、数学的発想を駆使したデザインの作品に至るまで、数々の数学のデザイン・美術への関わりぶりを豊富な図版で紹介します。数学とデザイン・美術の良好な呼応性に驚かれることでしょう。
第1章では、数学とデザイン・美術の共通点はどこか、また、長きにわたる歴史をもつユークリッド幾何学がデザイン・美術に及ぼした影響とはどんなことかがテーマ。美術とデザインを時系列に見てゆくことで、数学とデザイン・美術との呼応性を探ります。
第2章では、デザインに数学が使われている事例やアイデアを多数挙げ、数学的デザインとはどういうものかを追求します。シンメトリーや黄金比といった王道的技法はもとより、四則計算をデザインに当てはめる例など、アイデアやセンスの源ともなる数学的デザイン論も目白押しです。
第3章では、目に映る光や色が科学的にどう捉えられてきたか、色と光の科学的解明を皮切りに、中世以降の芸術家・デザイナーが採り入れてきた色の表現技法を豊富な作品例とともに紹介していきます。
数学や科学にご興味のある方は、理数系学問のデザイン・芸術分野での活躍ぶりに驚きの連続となるでしょう。また、デザインに興味のある方は、数学とデザインの結びつきを考えることで、デザインのセンスとはどういったものかを知ることができるでしょう。
―東京大学大学院助教授 佐倉統(本文より)
石田恭嗣(いしだ・きよつぐ)
1957年札幌生まれ。武蔵野美術大学大学院修了。同大学助手を経て現在、デザイナー、武蔵野美術大学非常勤講師。平面から空間までのデザインを扱っている。著書に『配色アイデア見本帳』、『レイアウトアイデア見本帳』、『文字アイデア見本帳』、『配色アイデアミニ帳』(エムディエヌコーポレーション)、『合格! 色彩検定3級対策』、『合格! 色彩検定2級対策』(明日香出版社)などがある。