2022年共通テスト速報<分析>

数学I・数学A

総評
  • 問題構成は,昨年と同じく,大問5問(第1問,第2問は必答,第3問~第5問から2問選択)であった。
  • 第1問は3つ,第2問は2つの中問形式で出題された。(昨年の第1問は2つの中問形式であった。)
  • 配点は,昨年と同じく,第1問,第2問が各30点,第3問~第5問が各20点であった。また,第1問の中問の配点は,〔1〕が10点,〔2〕が6点,〔3〕が14点,第2問の中問の配点は,〔1〕,〔2〕ともに15点であった。
  • 問題文の分量は,昨年の共通テストより微減(27頁→23頁)であった。第2問〔2〕の図が減り,頁数が9頁→6頁になったことによる。
  • 第4問を筆頭に,計算量は昨年の共通テストより増えた。一方,選択肢から答えを選ぶ問題は減った。
  • 計算量や文章量は昨年から大きく増加したわけではないが,思考力を要する問題が多く出題されたことで時間的な制約が厳しくなったと思われる。
  • 第1問〔2〕,第2問〔1〕では対話形式の問題,第1問〔2〕,第2問〔2〕,第3問では日常生活での活用場面を想定した問題,第2問〔1〕ではグラフ表示ソフトを用いた問題が出題された。
  • 第1問〔3〕,第2問〔1〕では単元をまたいだ融合問題が出題された。昨年は出題されず,目新しい出題であった。
  • 選択問題の難易度については,第4問の「整数の性質」が最も難しく,第3問,第5問は大きな差はなかった。
第1問(必答問題)
配点30点
〔1〕 数と式(式の値,対称式)
教科書章末問題レベル。
(1)は3文字の対称式の計算問題。従来の出題形式から変わらず,内容も基本的であった。
(2)はおき換えによる2文字の対称式を利用して,3文字の式の値を計算する問題。こちらも誘導に従って容易に解ける問題であった。
〔2〕 図形と計量(測量,正接の値)
教科書章末問題レベル。
鉛直方向と水平方向で異なる縮尺を考慮して,仰角の正接を求める問題。
異なる縮尺で表される長さを考慮する点は目新しく,混乱した受験生もいたかと思われる。しかし,正接の定義を正しく理解し,鉛直方向,水平方向の長さの比を正しく表すことができれば,容易に解ける問題であった。
〔3〕 図形と計量(正弦定理),2次関数(2次関数の最大と最小)
教科書章末問題レベル。
円に内接する三角形ABCの頂点Aから直線BCに引いた垂線ADの長さと,その最大値を求める問題。
(1)は正弦の定義と正弦定理による基本的な求値問題であった。
(2)は辺の長さが与えられていないときに,線分ADの長さの最大値を求める問題。2次関数との融合問題であったが,そのことよりも
 ・(1)と同様に正弦定理を用いることに気が付けるか
 ・ABの長さのとり得る範囲を正しく求められるか
  (各辺の長さの最大値は外接円の直径であることを考慮できるか)
が問題を解くうえでのポイントであった。
第2問(必答問題)
配点30点
〔1〕 2次関数(2次方程式と実数解の個数,2次関数の平行移動),集合と命題(集合の包含関係,必要条件と十分条件)
教科書章末問題を超えるレベル。
(1),(2)は2つの2次方程式について,係数と実数解の個数の関係を考察する問題。
(2)はn=3となる条件について,会話文で示されたもの以外にどのようなものがあるか見つけられるかがポイントであった。(1)で求めた実数解の個数をもとにすると考えやすい。
(3)はグラフ表示ソフトを用いて,文字係数の2つの放物線の動きを調べる設定の問題。標準的な問題であったが,④のグラフはx軸方向,y軸方向ともに動くことに注意。
(4)は2つの2次不等式の実数解の集合について,必要条件,十分条件を調べる問題。2つの2次不等式の解の動きを考察する点は明らかに難易度が高かった。(3)のグラフの移動をもとに考えたり,q=5,9のときの図をかいたりしてみるとイメージしやすくなる。また,必要条件と十分条件の正しい理解も必要であった。
〔2〕 データの分析(ヒストグラム,代表値,散らばりと四分位範囲,相関)
教科書章末問題レベル。
実社会のデータを基に作成した図から情報を読み取る形式は,昨年までの共通テストやセンター試験と同じである。教科書にある四分位数の定義や,ヒストグラムや箱ひげ図,散布図からの読み取りといった基本的な内容が問われている。全体的な難易度も昨年と同程度であり,完答したい問題である。ただし,分散と標準偏差に関する問題は,(3)で相関係数を求める際に利用するのを除き,出題が無かった。
(1)の範囲,四分位範囲の比較では,代表値が定まらないことに注意したい。
(4)の散布図を選ぶ問題では,データの値一つ一つを見るのではなく,平均値と相関係数から全体の分布を考察する必要がある。
第3問(選択問題)
配点20点
場合の数と確率(順列,組合せ,条件付き確率)
教科書章末問題レベル。
プレゼント交換という実生活にかかわる題材の問題。
完全順列がテーマになっている。
(1)は,2人または3人で交換会を行う場合に,1回目の交換で交換会が終了する確率を求める問題。樹形図を利用することで確実に正解できる。
(2)は,4人で交換会を行う場合に,1回目の交換で交換会が終了する確率を求める問題。丁寧な誘導がされているため,誘導通りに計算すればよい。
(3)は,5人で交換会を行う場合に,1回目の交換で交換会が終了する確率を求める問題。(2)と同じように場合分けを行う。
(4)は,条件付き確率を問われている。(2),(3)の答えを利用すれば良い。
全体として,考える人数が増えた際に,増える前の人数の考え方を応用することができたかがポイント。
第4問(選択問題)
配点20点
整数の性質(1次不定方程式)
教科書章末問題を超えるレベル。
方程式の係数が大きく,取り組みづらい問題である。
(3)は(2)を利用すればよい問題だが,利用の仕方が見慣れないものであり,戸惑った受験生も多かっただろう。
(4)は(2),(3)の考え方を初めからたどる問題で,(2),(3)を解く時点で誘導の意味や利用の仕方を把握しておく必要があった。ミスなく解ききるのは大変だったであろう。
第5問(選択問題)
配点20点
図形の性質(三角形の重心,チェバ・メネラウスの定理,方べきの定理)
教科書章末問題を超えるレベル。
昨年の第1日程では登場しなかったチェバ・メネラウスの定理を利用する設問が数多く見られた。
また,「~の形状/位置に関係なく」という特徴的な文言が多く現れた。見慣れない文言ではあるものの,利用する知識は平易なものが多く,差がつきやすい問題であったかもしれない。
(1)はチェバ・メネラウスの定理を利用して式の値を求める問題。具体的な辺の長さが与えられておらず,最後の式の値の導出は工夫が必要であった。
(2)は方べきの定理と(1)の式,チェバ・メネラウスの定理を利用する問題。
(3)は(1)の式と考え方を応用する問題。
全体として(1)の式をうまく扱えたかがカギである。

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