数研国語だより

令和6年度 大学入学共通テスト「国語」分析
概況
  • 旧課程最後となる令和6年度大学入学共通テスト・国語では、センター試験型のオーソドックスな設問が散見されました。国語全体では、昨年に対して易化と言えます。

  • 一方で、推敲や鑑賞といった生徒の言語活動を重視する設問も、各分野で引き続き出題されています。こうした問題では、複数の文脈を関連づけて把握する力が不可欠です。国語の大問が1つ追加される令和7年度大学入学共通テストに向けて、早期から問題演習を積み上げ、多様な形式に触れておくことが効果的だと考えられます。
  • 第1問(論理的な文章)
    題材
  • 渡辺裕『サウンドとメディアの文化資源学――境界線上の音楽』(2013年発行)より出題。音楽学者である筆者が、実例をもとに「音楽」「芸術」の概念を問い直した文章。渡辺裕の文章は、2004年センター試験(本試験)でも出題されています。

  • 文章量は約3,900字で、昨年より500字程度増。

  • 2022年・2023年と続いた二つの文章を比較読解する形ではなく、一つの文章を課すシンプルな形式でした。
  • 設問
  • 設問数・マーク数は昨年と比べて増減なし。

  • 構成は問1が漢字問題、問2~4が内容読解問題、問5が本文の展開や構成に関する問題、問6が本文に関する【文章】を推敲する問題。漢字の意味に関する問題は、今年は出題されませんでした。また、問5はセンター試験時代によく見られた形式です。

  • 問6(ⅰ)~(ⅲ)は、生徒が作成した【文章】について加筆修正すべき内容を答える問題。本文との関連を問うものではなく、【文章】自体の表現や内容を検討する点に特徴がありました。同様の形式は、2022年追試・2023年追試でも出題されています。
  • 第2問(文学的な文章)
    題材
  • 牧田真有子の「桟橋」(2017年発表)より出題。昨年は昭和期の作品が出題されましたが、今年は現代の作品でした。また、2019年から男性作家の作品が続けて出題されていましたが、今年は女性作家の作品が取り上げられました。

  • 文章量は約3,100字で、昨年より1,000字程度減。

  • 問7に【資料】として、劇作家・演出家の太田省吾による評論文「自然と工作――現在的断章」が提示されています。
  • 設問
  • 設問数は昨年と比べて増減なし。マーク数は2増。

  • 構成は問1が語句の意味を問う問題、問2~5が状況・心情説明の問題、問6が本文の表現に関する問題、問7が【資料】を踏まえた空欄補充問題。

  • 「第2問(文学的な文章)」における語句問題は、本試験では2021年以来の出題です。

  • 問7(ⅰ)・(ⅱ)は、本文と【資料】を読み比べたうえで会話文の空欄を補充する共通テスト特有の問題。複数のテキストの文脈を的確に把握する必要がありました。同様の形式は、2022年追試でも出題されています。
  • 第3問(古文)
    題材
  • 秋山光彪による小品「車中雪」より出題。本文は『源氏物語』を踏まえて描かれた擬古物語。本文の出典は、江戸時代後期の国学者である天野政徳が編んだ歌文集『草縁集』。昨年の『俊頼髄脳』(歌論)に続けて、和歌に関わる作品が出題されました。

  • 字数は約1,150字で、昨年より150字程度減。

  • 問4に、本文中の「桂」という語について解説した現代語の文章が提示されています。
  • 設問
  • 設問数・マーク数は昨年と比べて増減なし。

  • 構成は、問1が語句解釈の問題、問2が語句と表現に関する問題、問3が和歌の問題、問4が解説文の空欄補充問題。

  • 問4(ⅰ)~(ⅲ)は、本文を踏まえてその解説文の空欄を補充する問題。古文の設問中に、まとまった分量の現代語のテキストが提示された点に目新しさがありました。最初に解説文を読んでから本文を読解すると、内容を把握しやすかったと思われます。
  • 第4問(漢文)
    題材
  • 【詩】は晩唐の詩人である杜牧の「華清宮」より出題。【資料】Ⅰ~Ⅲは蔡正孫『詩林広記』、Ⅳは程大昌『考古編』の一節。

  • 字数は【詩】が31字、【資料】Ⅰが37字、Ⅱが24字、Ⅲが48字、Ⅳが48字で合計188字。昨年より4字減。

  • 【詩】の下に「華清宮の全景」を示した図が掲載されていますが、解答の検討にはほぼ影響しません。
  • 設問
  • 設問数・マーク数ともに昨年と比べて1減。

  • 構成は、問1が漢詩の知識問題、問2が語句解釈の問題、問3が返り点の付け方と書き下し文の正しい組合せを選ぶ問題、問4~6が【詩】と【資料】を読み比べる問題。

  • 問6は、4つの【資料】を根拠にして【詩】を解釈する設問であり、慎重な読解が求められました。文学史上の知識として玄宗と楊貴妃の関係を把握していた受験生は、全体として有利に読解を進められたと考えられます。
  • 対策本
    弊社では、令和7年度大学入学共通テスト対策問題集「新版 大学入学共通テスト準備演習/実践演習」シリーズを発行しています。

    書影をクリックすると各書籍の商品案内ページが開きます。
    新版 大学入学共通テスト実践演習 論理・文学編 新版 大学入学共通テスト実践演習 古文・漢文編
    新版 大学入学共通テスト準備演習 論理・文学編 新版 大学入学共通テスト準備演習 古文・漢文編
    入試対策問題集はこちら
    そのほか、「力をつける現代文/古典」シリーズをはじめとした各種問題集でも、「複数の文章を関連づけて考察する問題」「本文の内容に関する文章の空欄補充問題」「会話文形式の問題」など、共通テストへの対策ができます。

    書影をクリックすると各書籍の商品案内ページが開きます。
    新訂版 正しく読み・解くための 力をつける現代文 ステップ3 新訂版 正しく読み・解くための 力をつける古典 ステップ3
    現代文問題集はこちら
    古典問題集はこちら