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チャート式の数研出版 100th
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02

『選ばれる』
義務教育教材への挑戦

『選ばれる』義務教育教材への挑戦
数学をはじめ、高校の各教科で確かな実績を築いてきた数研出版。今ではその領域は小学校から大学、一般書までと広くなっています。中でも中学校においては、2012年から数学の検定教科書を発行。しかし、同じ教科書であっても、高校と中学校では大きな違いもあるようです。どのように挑戦していくのか、中学校を担当する営業と編集に語っていただきました。
営業部 山本 太庸
営業部
山本 太庸
営業副本部長。小・中・高・大にて教材提案の経験あり。現在は、中学関連に主に携わっている。中学校の数学教科書は後発ではあるが、編集は良い教材をつくっているので、その良さを、地域にあわせてきちんと伝えていくことが大切であると考えている。
編集部 橋本部長
編集部
橋本 忠孝
中学数学を担当。もともとは文系教科の編集を行っていたが、縁あって数学の編集部で部長を務める。「数学が専門」でないことは他の数学編集にない武器だと言いつつ、実は著者と数学の話ができるようになってきたことに安堵している。
スムーズな学びを目指して、ラインアップを拡充
スムーズな学びを目指して、ラインアップを拡充

山本:数研出版は主に高校の教科書・教材に携わってきた会社です。その中で小学校の算数や中学校の数学でつまずいている、という先生方からの声がまずありました。算数・数学は、習得した知識の上に新たな知識を積み上げていく、つながりが特に大切な教科です。そこで数研出版は、数学をはじめ各教科の中学向けのチャート式参考書シリーズなど、書店販売用の小中学生向け教材を発行したり、中学校でご使用いただく問題集を発行したりと、なるべくスモールステップで、スムーズに学んでいけることを目指して発行ラインアップを広げてきました。

橋本:ラインアップを広げる中で、いよいよ中学数学の検定教科書を発行しよう、ということになりました。私も初期から関わっていますが、実は文系で、それ以前は中学校の国語と英語の教材の編集をしていました。他のメンバーはみんな数学専門でしたね。

山本:中学校には同じクラスに様々な生徒がいるからこそ、つくる側にも多様な視点が必要だということから、文系の橋本さんが抜擢されたのでしょうね。

橋本:私もそう理解し、これまでの数学教科書の固定概念にとらわれずに、ほかの人と違う目線で見ることを大切にしていました。誰にとってもわかりやすい言葉で書かれているか、などは気にしてきました。

高校と中学校で求められるものの違い
高校と中学校で求められるものの違い

これからの数学 山本:義務教育では社会や世界の状況を幅広く視野に入れた教育や、地域への関心を高めることがより強く求められています。この年代の人間形成において非常に大切なことですからね。

橋本:数学以外のことも意識しておく必要がありますよね。世の中や地域への興味を喚起させることや、キャリア教育や他の教科とのつながりも、意識して編集するようにしています。

山本:義務教育では、教科書の採用はそのほとんどが学校ごとに決まるのではなく定められた地域によって決まります。高校では授業をされる先生方に、直接教科書の特色をお伝えすることが、私たち営業の主な役目になります。しかし中学校では、書籍の良さのみならず、学校や地域の課題に対していかにお役に立てるかというのも大切。そのことをどうやってお伝えするか、悩むところも多かったですね。

橋本:私たち編集もそうですが、営業の取り組み方も高校と中学校では大きく異なりますよね。

山本:そうですね。高校では学校を訪問することが基本ですが、中学校では地域を訪問するといった意識に変わりましたね。それぞれの地域で求められていることを、きちんと受け止めていくことが大切だと思っています。

これからの数学を目指して教科書を編集
これからの数学を目指して教科書を編集

橋本:現在発行している教科書には、問題解決のさまざまなプロセスを示す、生徒たちと先生による対話が各所に設けられていますが、中学校数学の教科書では新しい試みかもしれません。

山本:2012年に数研出版として初めて発行した中学校数学の教科書は、ご採用していただけた学校からは、シンプルで見やすいといった、概ね高評価を得られていました。ですから、次の教科書もこれをベースにして積み上げていくものと私自身は考えていました。そうしたら書名まで変わったものですから、正直驚きましたね。

橋本:最初から対話形式ありきで、企画を立てたというわけではありません。平成29年に告示された学習指導要領には、大きな変更点として「『主体的・対話的で深い学び』の実現に向けた授業改善の推進」とあります。これはどういうことなのか、アクティブに学べる教科書ってどういうものなのか。編集メンバーや著者の方と徹底して話し合って出した答えが、この対話形式だったのです。

山本:私もその話を聞いて、納得しました。ある問題に対してさまざまな考え方を生徒目線で示すことで、答えを当てることよりも考えることにフォーカスが当たる。それって、数研出版が大切にしてきた「考えるプロセス」にも通じるなと思いましたね。

橋本:例えば、教科書で一つの解法だけを示すと、生徒はこの問題はこう解かなければいけないと思ってしまいがちです。かつては、短時間で答えを出すという効率性が重視されていたこともあり、一番便利な解き方を教える傾向がありましたが、今は、回り道してでも多様な視点で考えられるようになることが重視される時代になってきています。ですから、生徒が自ら考えて多様な意見を出し合いながら学んでいく、そんな新しい数学を目指して教科書をつくりました。名称を「中学校数学」から「これからの数学」に変えたことにも、その想いが込められています。

山本:この考え方は、学校や地域からのご要望にマッチしている部分も大きいと思います。私たち営業がこの教科書の考え方をしっかりと伝えていかなければと思っています。

挑戦し続けていく姿勢が大切

山本:私たちには高校での経験と実績があり、それを中学校に活かせることは大きな強みです。しかし、それだけでは中学校や地域のニーズに応えることはできません。時代に合わせ、地域に合わせ、挑戦をしていかなければいけない立場でありますね。

橋本:中学校の教科書では後発であり、すでにある教科書と同じことをするなら発行する意義は薄れてしまいます。中学校の数学に本当に大切なものは何かを考えぬいて、これからも固定概念にとらわれることなく柔軟な発想で挑戦し続けていきたいですね。

山本:2021年には学校図書が数研出版のグループ会社となりました。学校図書は長年にわたり小学校、中学校の教科書を発行してきており、知見も経験も豊富にあります。また地域のニーズへの情報力にも優れています。お互いの個性を尊重しながら、これからますます小学校との接続もスムーズな教材のご提供、ご案内ができるのではないかと思っています。